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仕切り線1

【09*毒使いの独白】
地下12階攻略中。
ライバル錬金術師の独り言。

 「毒使い」の異名を持つ錬金術師ストラウドは、樹海探索ギルドのひとつ「ルミエル」のメンバーのひとりである。
 ルミエルは腕利きと評判のギルドで、パラディンのルゥクスを筆頭に、実力者が揃っている。
 が、最近は、大躍進中のギルド「シュタール」に押され気味で、景気があまりよろしくない。

 先日、そのシュタールと、樹海の奥でバッタリ出くわし、共闘する機会があった。
 その際、ストラウドは、シュタールの錬金術師・キトラの術式起動の早さ、正確さ、鮮やかさに驚き、同時に心底恐怖した。
 ありえない。
 錬金術は、魔法ではない。緻密に練り上げた計算に基づいて術式を起動させ効果を得る、科学の一種である。モンスターと交戦中に脳をフル回転させて基本式を組み立て計算する、それだけでも大変なのに、あの男は。

「何を言っている?」
 あの錬金術師は言ったのだ。
「基本式だけでなく、気温や、風向きなんかも一緒に計算しなければ、正確に術式起動できないだろうが」

 確かにそうだ。確かにそう。だが、ただでさえ複雑な計算式に、刻々と変化する要素をも加えるなんて、考えただけで目眩がする。ある程度の不確定要素を含んだまま術式を起動させる、それが普通なのだ。
 それなのに。
 複雑な計算式を追加してなお、ストラウドよりもずっと術式起動が早いだなんて。

 断言できる。キトラの錬金術は、才能がどうの、という生易しいレベルではない。改めて、ストラウドは、キトラの才に、身震いする。そして、その才故に、何かとんでもない事件に巻き込まれるだろう、と推測した。
「天才には天才の苦労がある、ってな。それならオレは、いっそ、凡才で十分だよ」


仕切り線2
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