「前世界の生き残りは我らのみ……と思っていたが」
世界樹と一体になった『王』はくっくっと嗤う。
「……まさか、もうひとり、いたとはな」
枯れ木のような、冷たい、乾いた笑いを浮かべ、王は視る。
目の前に立つ、黒髪の錬金術師を。
ごう、と、風が逆巻いた。
色とりどりの花が宙に舞う。
……花を、掴もうと、王はそっと手を伸ばす。
「よりによって、」
伸ばされた腕、
それは、
「……ヒトでないものばかりが生き残るとは」
ヒトの腕の形をしていなかった。
「御愁傷様」
錬金術師は無感動に呟く。
彼のメモリは、再起動の際、破損した。
前時代のデータはひとかけらも残っていない。
記憶が無いのなら、なかったことと同じだ。
「さあ、」
黒髪の機械人形は右腕を掲げた。
ガントレットの指が、がしゃん、と鳴る。
「終わりの、はじまりだ」 |