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FF3おはなし15

 グルガン族の集落から、まっすぐまっすぐ北東へ。一晩の野宿を挟んで起伏のない草原をひたすら歩けば、やがて、海に突き出た菱形の岬にたどり着く。
 緑の草がざわざわ揺れる岬の中央、天を突き刺すように建っているのは、鈍い灰色に輝く円塔。その塔を構成するのは、石でもレンガでも金属でもない不思議な素材。ラーンが「これ、何だろう?」と興味津々触れた途端、「わっ」と叫んで手を引っ込めた。
「この塔、なんだか、微妙に振動してるみたい」
「なんか、ずっと、低い音が鳴ってるよな。大きな動物が唸ってるような感じの」
 様々な意味で、今までに見たことのない建物。おそらく、これがオーエンの塔だろう。
 最初に足を踏み入れたのは、いつになく緊張した表情のデッシュ。彼の後について入った四人は、内部のさらなる異様さに言葉を失った。
 塔の壁を這うように配された、いくつもの管。その間隙を埋めつくす、大小の歯車。鎖。名前すらわからない部品。それらが渾然一体となって、ゴトゴトギシギシ動いている様は、まるで、途方もなく巨大な生物の体内に迷い込んでしまったかのよう。思わずユールはぶるりと震えた。
「何なの……これ」
 ナータは、さぁなぁ、と首を振る。
「理屈はよくわかんねーけど、シドの飛空艇の機関室もこんな感じだったな。これで、何を制御してるんだろうな?」
 本当にね、と、ラーンが頷く。
「この塔に、デッシュさんに関係する何かがあるんだね。気合入れて行くぞぉ~!」
 塔を駆け上っていく一行を、お馴染みの魔物が通せんぼ。今回はそれに加えて、ややこしい仕掛けが行く手を阻む。
 どう見ても壁にしか見えない扉や、特定のスイッチを特定の順番で押さなければ出現しない通路、中には「パスワード」なる秘密の言葉を入力しないと開かない扉などもあり、一行の頭を悩ませる。
 様々な記号の書かれたボタンがいくつもずらりと並んだもの(キーボードというらしい)を前に、ああでもない、こうでもない、と悪戦苦闘。
 知恵熱が出そうになったところで「そういえば、ここのパスワードは、確か……」デッシュの長い指がキーボードの上で軽やかに踊ると、がちゃん。何らかの仕掛けが動き、扉のロックは解除された。
「凄〜い!」
 ラーンが感嘆の叫びを上げる。
「やっぱりここは、デッシュさんと関係があるんだ!」
「んん~。そうだなぁ。この風景には見覚えがあるような気がするし、何か、あるんだろうな。それにしても……」
 デッシュが何か言おうとした瞬間、真っ赤な閃光が塔内を走った。
「わっ!」
「何?」
 その閃光は、直接の支障がある訳ではないけれども、時折、予告も何もなしにビカッと光るので、心臓に悪い。
「んもう! この光、いったい、何なのかしら?」
「上の方で光ってるみたいだよ」
「それじゃ、早く行って、どうにかしましょ!」
 鳥女のフリアイや、醜悪な小悪魔ファージャルグといった魔物を撃退しながら、一行は最上階へとなだれ込んだ。
 ホールのように広々とした空間の中央に、柵に囲まれた穴があり、そこから、時折、真っ赤な火柱が吹き上がるのが見える。
「これが、あの光の正体か。すっげーな、よく燃えてら」
 呑気に呟くナータの横で、デッシュが脂汗が浮かぶ額を押さえながら、喘ぐように言った。
「なんてことを……! いったい、誰が、こんな」
「それは~」
「僕達で~す」
 突如、何の前触れもなく、一組の双子が姿を現した。

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