デグネコ本舗タイトル
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16
 文字通り、目の前に、突然現れた双子に、ユールは思いっきり飛び上がって「きゃああああ!」と絶叫し、その声に驚いたナータが「わあああああ!」と悲鳴を上げた。
「何者だ!」
 ルーンの問いに、二人は両手を振りながら「通りすがりの双子で~す」 と明るく答えた。
 見た目の年齢は、ウル四人組よりも下。桃色の髪を肩の高さで切り揃えているところや、目を瞬きするそのタイミング、ゆったり長い衣装などなど、互いに互いがそっくり同じ。どっちがどっちか、まったく見分けがつかない。
「お前達が、オーエンの塔に細工したんだな!」
 声を荒げて臨戦態勢に入る戦士達に、双子は「いやーん」と両手をもじもじさせた。
「やる気ですねぇ~」
「怖いですねぇ~」
「この大陸を落とされるのが~」
「そんなに嫌なんですか?」
「!?」
 双子の言葉に、一行は目を見張る。
「大陸を……落とす?」
「どういうこと?」
 顔を見合わせ言葉を交わす四人に、双子は長い袖に隠された手を口元にあて、クスクス笑った。
「どうって、言葉通りの意味ですよ~」
「この大陸は、宙にプカプカ浮いているんで~す」
「今、あなたたちが立っている……」
「オーエンの塔が生み出す力でね!」
「……!」
 棒を飲んだように立ちすくむ四人。それもそのはず、この地面が宙に浮いている、などと、信じられるはずもない。
「信じられないのなら、信じなくてもいいですよ~」
「今、塔の動力炉を暴発させてますからね~」
「落っこちるのも時間の問題です~」
「そうすれば、ここが浮遊大陸だってことが、イヤでもわかるでしょ~」
「もっとも、わかった瞬間に、みんな死んじゃいますけどね~」
 双子が声を揃えてクスクス笑った、次の瞬間。
 がぁん!
 デッシュが銃剣から放った弾丸は、双子の間をすり抜けて、後ろの壁に命中した。
 双子はにんまり笑うと、デッシュに向き直った。
「おやおや。銃剣とは、懐かしいですね~」
「それの使い方を思い出したということは、記憶を取り戻した、ということでしょうか? 古代人のデッシュさん」
「……」
 一瞬の沈黙。
「古代??」
 それってなんか聞き覚えがあるような、と首を傾げるラーンに、ユールが「もう忘れちゃったの?」と突っ込みを入れる。
「前に聞いたじゃない! 昔、機械文明が繁栄していた、古代って時代があったって!」
「じゃあ、デッシュさんは、その時代の人間なの?」
「ははぁ、『在るはずのない人間』ってーのはそういう意味か。……待てよ、古代ってのは何年前なんだ?」
 ナータの問いに、双子が答える。
「千年前ですよ~」
「へ? ……千??」
「そうです。千です」
「百の十倍です〜」
「いや、さすがにそれはわかる……」
 思わずナータが肩を落とすと、双子は「そうですね」「さすがにね」「よくできました」と笑う。
「千年前、古代人は機械によって繁栄しました」
「けれども、利益を追求するあまり、光の力を使いすぎちゃったんですね~」
「……ま、その通りだな」
 デッシュは、複雑そうな顔をして、ひょい、と肩をすくめた。
「結果、光の力は暴走し、光の氾濫……大災害が起こった。古代文明は滅び、人々は機械を捨てることを誓ったが、すでに大勢の人々が暮らしていた浮遊大陸、こいつを失う訳にはいかなかった。浮遊大陸の動力炉を監視し、メンテナンスを行う誰かが必要だった。だから俺は長い眠りについたんだ。塔に異常が起これば、目覚めるようになってた……」
 そこまで一気にしゃべると、デッシュは四人を見回した。
「俺はこの塔の監視人。古代人の生き残りさ。あんまり長く眠ってたせいで、ちょっとばかりボケちまったみたいだが、もう、大丈夫だ」
「じゃあ、あの暴発してるの、直せるの?」
 ラーンの問いに、デッシュは「もちろん」と力強く頷く。
「そのために、俺はここへやってきたんだ。何が何でも直してやるさ」
「ほぇ〜」
「かっこいい〜」
 双子は感嘆の声を上げ、「それでは出血大サ-ビス!」とウィンクしながらデッシュを指差した。
「監視人さんの心意気に免じて、僕たちは一旦退きましょう」
 まさかの急展開に、一行は「は?」と間の抜けた声を上げる。
「逃げるのか!」
 ルーンの挑発を、双子はあっさり受け流す。
「そう解釈して頂いても構いませんけどね~」
「そもそも、今のあなた達の力では、僕たちを倒すことなどできません」
「そんな状態で戦っても、面白くないですし~」
「それに僕達、何が何でも大陸を落とせ、とは命じられていませんし」
「ですから撤退します~」
「けれども、勘違いしないでくださいね」
「動力炉が爆発寸前であることに、変わりはありませんから」
「ではでは~」
「またお会いしましょ~」
 しゅっ。
 双子は、風船から空気が抜ける時のような音と共に、文字通り、姿を消した。
 一行はしばし呆然としていたが、いち早く我に返ったデッシュが、動力炉に駆け寄った。
「こいつぁ酷いな……」
 忌々しそうに呟いて、デッシュは四人の方を振り返った。
「浮遊大陸は、風と火のクリスタルを動力源として浮かんでいる。ふたつのクリスタルと、オーエンの塔がうまく機能していれば、ほとんど問題は起こらない……が、今、火のクリスタルに問題が起きている。誰かが、火のクリスタルを暴発させているんだ」
 じゃあ、と、ラーンは真剣そのものの表情で呟く。
「あたしたちが、その誰かをとっちめればいいんだね」
「ああ。俺の記憶違いか、誰かが場所を移してなけりゃ、火のクリスタルは、ここから西方の島にあるはずだ。……頼めるか?」
「もちろん!」
 四人は力強く頷いた。
「この大陸が浮いてるってーのが、いまひとつピンとこねーけど」
「やってやるさ」
「風のクリスタルは、他のクリスタルを探せって言ってた。オーエンの塔のことがなくったって、どうせ、見つけなくちゃならなかったんだもの、同じことだわ」
「だから……大丈夫!」
「うん」
 デッシュはにっこり笑って、柵に手を掛けた。
「それなら安心だな。……ってことで、俺は直せるところから直してみるわ。この火の勢いだ、もしかすると、こんがり焼けちまうかもしれねーけど、ま、どうにかなるだろ」
「……!」
 そう。
 動力炉を修理するには、火柱を上げまくっている穴の中……塔の中枢部へ行かねばならない。そのことに気づいた四人は悲鳴を上げた。
「あんなトコに飛び込んだら死んじまうぞ!」
「そうだよ! 飛び込むんなら、あたし達が火のクリスタルをどうにかしてからの方が……」
 口々に叫ぶ四人を、デッシュはまぁ落ち着けと制止する。
「そうしたいのは山々なんだが、それじゃあとても間に合わない。どうしてあの双子が退いたかわかるか? 自分たちがいなくても、俺が焼け死ぬなり塔が崩れるなりして、99%大陸は落ちると踏んだから、余裕しゃくしゃくで退いたんだ。それくらい、今の状況は悪い。……だからこそ、やるんだ。残りの1%に賭ける。あの双子が何者だか知らねぇが、何が何でもあいつらの鼻をあかしてやらなきゃな。……だろ?」
「……」
 四人は顔を見合わせた。
「よりによって、私の大嫌いな、『この1%にすべてを賭ける!』っていうのを、やらなきゃいけない訳ね」
 しんどいわぁ、と溜息をつくユールに、仕方ねーな、とナータが呟く。
「大陸が落ちたら俺達も死んじまう訳だしなー」
「ああ。だから、お互い、頑張ろう」
 デッシュはいつもの調子でニッと笑い、
「そんじゃ、行ってくるわ」
 ひらりと動力炉の中へ身を躍らせて、一行の前から姿を消した。

NEXT→17*火のクリスタルを求めてに続く
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